研究概要 |
ヘルペスウイルスに属すEBウイルス(EBV)は、伝染性単核症(IM)、慢性活動性EBV感染症(CAEBV)、免疫不全宿主のリンパ増殖性震恵等の病因となる。EBV感染リンパ球の堵殖がこれらの疾恵の根本原因であることから、増殖阻止法の開発が新規治療法に直結すると考えられる。申請者らはEBV感染B細胞でのCD40L/CD40相互作用阻止による感染細胞の増殖、アポトーシスにおよぼす影響について解析してきた。そこで次に、EBV感染が報告されているT,NK細胞におけるCD40シグナルの解明を通し、EBV感染細胞の増殖制御を目指した。CD40はB細胞などの抗原提示細胞に発現され、CD40リガンド(CD40L)は主に活性化T細胞に発現される。B細胞の活性化においては、抗原刺激とT細胞からのヘルプの二つのステップが必要であるが、CD40LによるCD40の刺激は後者の中心シグナルとなり、さらに胚中心の形成、クラススイッチ、体細胞超変異、記憶B細胞の分化などにも必要となる。しかし、T,NK細胞におけるCD40シグナルの役割は全くなされていない。EBV感染によりT,NK細胞上に共発現したCD40/CD40L相互作用の役割と機構解明を目指した。 1) 慢性活動性EBV感染症(CAEBV)および鼻性T/NK細胞リンパ腫由来のEBV感染細胞株(NK細胞3株, αβT細胞1株、yδT縞胞4株)ではCD40とCP40Lの両方が発現していた。2)上記細胞株において.CD40/CD40Lシグナルを阻害すると、アポトーシスが興亢進した。3)すべてのCAEBV患者末梢血においてEBV感染T細胞にCD40の発現を検出した。 また、このCD40へのシグナルがアポトーシスを抑制した。骨臆移植による治療を経た後、EBV感染細胞の消滅とともに、感染していたT細胞にCD40の発現は検出されなかった。4)EBV感染によりT,NK細胞上にCD40,CD40Lが共発現するが、アポトーシスを抑制に働いているのはCD40へのシグナルであり、CD40Lへのシグナルではないことが示された。5)X連鎖高IgM症候群(XHIM)恵者B細胞へEBV感染させトランスフォ一ムし樹立したリンパ芽球細胞(XHIM由来LCL)は、遺伝子異常によるCD40L欠損であるため、EBV感染によるCD40Lの発現はない。XHIM由来LCLは、健常人B細胞から樹立したLCLと比較して、アポトーシス抵抗性が極めて低いことが示された。 以上をまとめると、EBV感染T,NK細胞においてもCD40/CD40Lの共発現が検出され、EBV感染細胞のアポトーシス回避に働いていることが示された。また、このCD40へのシグナルを阻害することで感染細胞のアポトーシス亢進が見られたことから、CD40シグナル阻害による感染細胞制御の可能性が細胞株と患者検体の両方で示された。また、B細胞におけるCD40L発現誘導は、トランスフォ一メーション効率に重要な役割を果たすばかりでなく、トランスフォーム後のアポトーシス抵抗性にも重要であることが示せた。
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