研究概要 |
現在多くの病院に電子カルテが導入されつつあるが,教育という視点が欠如していると考えられたため,教育という観点から、電子カルテになって,どのような変化が起こったかを明らかにし,その結果を元に,失われた教育効果を分析し,それを補う教育方法を開発することを本研究の目的とした.佐賀大学医学部附属病院関連初期臨床研修プログラムで研修を行っている研修医,佐賀大学医学部附属病院で"紙カルテ時代"の研修・診療を経験し,現在研修医の指導に関わっている医師,および,研修指導に関わっている全国の医師を調査対象にし,聞き取り調査やアンケート調査を行った.電子カルテの教育上のデメリットは、(1)コピー&ペーストが出来る弊害,(2)書(描)かない・書(描)けない弊害,(3)現場以外でも入力できる弊害,の3つにまとめることができた.それらのデメリットを補うために,何も見ずに症例呈示をさせる,画像をきちんと読影させることなどを意識的に教育企画として行う必要があると考えられた、また,指導医による診療記録の監査(特に退院時要約の)が,今まで以上に重要であると思われた.これらのデメリットは、電子媒体を使用する上でのメリットが,教育上,「仇」となっていると言うことができ,電子カルテを改良すれば解決する問題とは異なる.そのことを指摘した本研究は,今後世界的に普及していく電子カルテを研修医が扱っていく上で,指導医に注意を促す大変意義のある研究と思われる.
|