研究課題
基盤研究(C)
我々は硫酸多糖が血管新生の引き金となる初期因子の作用を抑制する可能性を報告してきた。硫酸多糖は血管内皮細胞への毒性も殆どないことから、有効性に富んだ希少な薬剤になると推察される。我々は、特有で多様な硫酸多糖を豊富に含んでいる天然素材として海藻があることに着目し、阻害剤としての可能性を検討した。そこで、どのような海藻由来酸性多糖に強力な血管新生阻害作用があるか、薬剤として活用可能な構造への変化に伴いその作用がどうなるか、また血管内皮細胞における作用機序はどのようなものか、これらの点について検討し、以下の知見を得た。1.褐藻由来フコイダンは血管新生を強く阻害した。一方、同じ褐藻に存在する酸性多糖で、固形癌における抗腫瘍効果の低いアルギン酸は、微弱な血管新生阻害活性であった。2.低分子化してもフコイダンは血管新生阻害活性を保っていた。3.構造や特質がほとんど調べられていない緑藻から抽出した硫酸多糖の粗抽出画分は、微弱ではあるものの血管新生を抑制する傾向が見られた。4.海藻由来硫酸多糖は、血管新生因子(bFGF)誘導性で血管新生に重要と目される物質の合成を抑制する傾向が見られた。以上の結果より、海藻由来硫酸多糖による血管新生の抑制が抗腫瘍効果に寄与する可能性と、低分子化しても活性が保持されるため吸収面からも優れた血管新生阻害物質となる可能性が示唆された。また血管新生の引き金の作用を阻害できる優れた物質である可能性が推察された。これらの成果は、今日まで生理活性物質として殆ど利用されていなかった海藻由来成分が、血管新生の阻害物質として、有効な活用が可能であることを示唆する。海藻由来硫酸化多糖の血管新生阻止作用を明らかにしたことは、新しい癌治療法の導入と予防の実用化を早め、また糖尿病性網膜症など多くの血管新生性疾患の新たな治療および予防の基盤構築に寄与すると考える。
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