研究課題
基盤研究(C)
本研究は、NF-κBを中心とした炎症関連転写因子を病院検査室で測定できる技術を開発することにより、炎症性サイトカイン産生亢進状態を網羅的に予測できるシステムを構築することにより、致死率の極めて高い全身性炎症反応症候群(SIRS)の発症を予測することが到達目標である。2年間の研究成果の概略を以下に示す。1)炎症性サイトカイン異常産生とNF-κB活性化亢進の関連:マウスマクロファージにグラム陰性菌体成分LPSを添加するとその受容体であるTLR4からシグナルが伝わりNF-κB活性化を介して、グラム陽性菌体成分PGの受容体であるTLR2発現が誘導される。この結果はグラム陽性・陰性菌複合感染にNF-κB活性化が関与することを示している。2)NF-κB定量測定用ELISA開発:NF-κB結合コンセンサス配列を有する結合特異性の最も高いプローブを作成した。3末をビオチン化しマイクロプレート上に固着した。本プレート上に核蛋白を添加しNF-κBp50またはp65抗体と反応後発色反応にて定量化した。リコンビナント蛋白を用い本ELISA法では6.25ngまで測定可能であった。3)NF-κB定量測定用ELISAシステムによるNF-κB活性化とIL-6経時解析:ヒト末梢血単核球にPHA/PMAを刺激すると、刺激30分で核内NF-κBp50が上昇(OD値が0.3から1.6)、しかしIL-6産生はこの時点では確認できなかった。しかし、刺激4時間でIL-6産生上昇(OD値が30分で0.12から4時間で0.41)が確認され、NF-κB活性化がIL-6産生に先行することを確認した。4)NF-κB定量測定用ELISAシステムによる健常者リンパ球核内NF-κB量の基準範囲設定:インフォームドコンセントが得られた健常者(28人)リンパ球核蛋白で測定した。その結果p50ELISAで3名が0.01ng/μgで残り25名は0.005ng/μg以下の測定限界以下、p65ELISAでは28名全例がOD値0.1以下の測定限界を示し、健常人はほとんど核内へNF-κBが移行していないことが推定できた。5)表面プラズモン法(SPR)を利用した高感度測定法の特異性検討:健常者の核内NF-κB量がELISA測定限度以下の0.01ng/核蛋白(μg)以下に存在することより、さらに高感度化を実現するためSPR法応用を検討した。HeLa細胞にTNF激した核蛋白で検討した結果、0.001ng/μgまでシグナルが得られたが、NF-κBとのプローブ競合反応試験にて、非特異的反応が強く,高感度に伴う特異性低下が課題となった。以上、臨床検査領域で炎症性サイトカイン産生を予測するための転写因子NF-κB活性化測定には、0.001ng/μg以下まで直線性を示す高感度測定系とその特異性が保障される新しい測定技術導入開発をすすめる必要があることが明らかとなり、現在、新しい1分子計測法を用いた測定法を検討中である。
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