研究概要 |
生体内にはごく微量で生理作用を発揮する低分子化合物(ハプテン)が多数存在する.これらの体液中レベルの測定は重要であるが,分子サイズが小さいため非競合型のイムノアッセイを適用することは不可能で,このため測定感度はfemtomoleレベルにとどまっていた.そこで,ハプテンに親和性を示す低分子量のアクセプター(ACC)と,ハプテンーACC複合体を認識する抗体(anti-COM)をキーマテリアルとする高感度センシングシステムの開発に着手した.まず,ACCとしてβ-シクロデキストリン(β-CD)を利用するシステムを検討した.モデルハプテンとして25-ヒドロキシビタミンD3、9-cis-レチノイン酸、フェノールフタレイン(PP)を選んだが,いずれもβ-CDと安定な包接錯体を形成した.そこで,ランダム変異が導入されたscFv提示ファージのライブラリーから,特異的なanti-COMを提示するクローンの選択を試みた.その結果,いずれのハプテンについてもβ-CD固定化プレートを用いるELISAにおいてハプテンの添加により約2〜4倍強いシグナルを与えるクローンが得られた.PPについては,その増量に応じたシグナル強度の増大も確認され,非競合型イムノアッセイが成立することが示された.ついで,H鎖可変部ドメイン(VH)のみから成る"単一ドメイン抗体(sdAb)"をACCとして用いる系について検討した.先にクローン化した抗エストラジオール(E2)抗体の砺遺伝子にランダム変異を導入して,sdAb提示ファージのライブラリーを構築し,ビオチン標識E2との反応を利用する選択サイクルに付して,E2-BSA固定化プレートを用いるELISAにおいて陽性シグナルを示すクローンを得た.これらsdAbとE2の複合体に特異的なanti-COMが得られた場合,E2の高感度なイムノメトリックアッセイが可能と期待される.
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