研究分担者 |
小林 章雄 愛知医科大学, 医学部, 教授 (80135342)
柴田 英治 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (90206128)
渡辺 直登 慶應義塾大学, 大学院・経営管理研究科, 教授 (90175109)
久村 恵子 南山大学, 総合政策学科, 准教授 (60350732)
原 一夫 愛知医科大学, 医学部, 教授 (70126895)
稲福 繁 愛知医科大学, 医学部, 教授 (80022862)
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研究概要 |
卒後臨床研修制度にメンタリング・プログラムを導入し,メンタリングが研修医に及ぼす効果や実行可能性を明らかにするため,臨床研修医を対象とした無作為割りつけ(RCT)を行うとともに,メンタリング経験により対象者を区分しメンタリング効果について比較検討した。 RCTの結果,メンタリング実施群では非実施群と比較して,(1)1年後にGHQ得点が減少し精神健康度が良好となった,(2)2年後にメンタリング経験が有意に上昇した,(3)1年後にメンタリング非実施群に認められた競争的達成動機の増加が認められなかった,(4)2年後にGHQ得点が増加し精神健康度が悪化した,(5)2年後に自尊感情が向上した。またメンタリング経験区分による結果から,メンタリング増加群はGHQ得点が最も低く,仕事満足度や職務満足が最も高かった。一方,コミットメントや達成動機は,むしろメンタリング減少群で高く,有意に増加した。 研修医におけるメンタリング経験は経年的に自然に増加するが,個人の精神健康度やそれ以前のメンタリング経験が低い場合は,特に積極的にメンタリングを行うことにより,その実効性が増加すると考えられる。またメンタリング効果は,仕事満足度や自尊感情を増加させると考えられるが,組織コミットメントや達成動機については低下させる可能性が示された。 新しい卒後臨床研修制度のもと,医局制度に縛られない労働態様は,メンタリングにおいてもより自律的な志向に向かわせているのかもしれない。研修医は,技術的な習得や職業人の仲間としての意識については充分にメンタリングを受けていると感じていたが,より上位者に対しては満足できていなかった。この問題の解決のためには,もっと上位者を含めたネットワーク的なメンタリング関係の構築が必要と考えられる。
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