研究概要 |
1.外傷性・内因性脳内血腫の鑑別診断に関する軸索変化の検討:頭部外傷における軸索の経時的変化と特異性を明らかにするために,頭部外傷例・対照例について免疫組織化学を用いて検討したところ,amyloid precursor蛋白(APP),neuron-specific enolase(NSE),neurofilament(NF)160染色では受傷後2時間以上経過した頭部外傷例のみに軸索変化を認めた。Mitochondria染色では受傷後1日以上経過した外傷例の軸索変化が検出され,NF200染色では変化の有無にかかわらず大部分の軸索が染色された。 2.血管マーカーを用いた大脳基底核血腫における血管変化の検討:外傷性・内因性の脳内血腫例をangiotensin converting酵素(ACE)免疫染色を用いて検討したところ,内因性の例に血管陽性像を認める一方,1例のみではあるが同様の像を示す外傷性例もあったため,血管染色単独で判断するのは危険であることが示唆された。 3.実際の解剖例への血管免疫染色の応用:自動車事故3週間後に死亡した脳内血腫例では,APP,NSE染色で軸索変化が検出された一方,ACE染色では染色陽性の血管を認めないため,本例の脳内血腫は外傷性であると判断した。全身の外表に多数の損傷を認めた脳内血腫例では,組織検査で血管壊死の像を認め,ACE染色でも染色陽性血管を認めたこと等から,本例の脳内血腫は内因性であると判断した。本例ではNSE染色で軸索変化が検出されたため,血管の免疫組織化学が誤診を防ぐために有用であった。
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