研究概要 |
本研究の目的は、法医実務や救急外来における迅速診断に応用可能なスクリーニング法の開発であり、抽出法としてSPME,迅速検出にFPDを用いた。その前段階の簡易スクリーニング法として,トライエージDOAを用いた血中薬物の検出を試みた。トライエージDOAは尿中乱用薬物検出キットであり,これを血中薬物の検出に応用するために,ジエチルエーテルを用いて液-液抽出による前処理を行った試料をトライエージに供した。その結果,各薬物の最低検出濃度と回収率は,Phencyclidine 10ng/ml・83.0%,Alprazolam 90ng/ml・78.5%,Diazepam 140ng/ml・91.9%,Nitrazepam 300ng/ml・85.5%,Triazolam 80ng/ml・96.7%,Amphetamine 520ng/ml・56.3%,Methamphetamine 400ng/ml・59.8%,Morphine 300ng/ml・51.6%,Codeine 120ng/ml・111.6%,Pentobarbital 60ng/ml・81.6%,Barbital 100ng/ml・72.3%,Phenobarbital 160ng/ml・62.1%,Amitriptyline 200ng/ml・81.0%,Imipramine 200ng/ml・81.0%,Nortriptyline 400ng/ml・26.3%であった。 次にSPME法とGC-FPDを組み合わせて,8種類の有機リン剤の検出法の検討を行った。各薬物の標準品をメタノールで溶解し,GC-FPDに直接注入して,保持時間を測定した。次に各薬物の標準品をヒト全血中に添加し除タンパクなどの前処理をした後、SPME抽出を行い,GC-FPDで測定した。各薬物の回収率は,0.03-2.19%で,検量線は,フォサロン(200-800ng/0.5ml)を除き,25-400ng/0.5mlの範囲で直線性を示し,検出限界は,ジクロルボス,フェニトロチオン及びマラソンは0.2ng/0.5ml以下,フェンシオンは1.6ng/0.5ml以下,プロフェノフォス及びエチオンは6.3ng/0.5ml以下,イソキサチオンは25ng/0.5ml以下,フォサロンは200ng/0.5ml以下であった。これらの結果から,全血をジエテルエーテルにより液-液抽出した試料をトライエージに用いたスクリーニング法とSPME法とFPDを組み合わせた方法による有機リン剤の検出法は,法医実務への応用が可能であると考えた。
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