研究課題
基盤研究(C)
脳内に投与した細菌性内毒素(LPS)による脳のサイトカイン産生に対してアンギオテンシンII(ANG II)は促進作用を及ぼす。平成17年度は、この促進作用に転写因子の活性化が関与しないことを示唆する結果を得た。しかし、脳の全ニューロンと全グリア細胞のうち、脳のマクロファージであるミクログリアは9〜18%にすぎず、上記in vivoでの実験の転写因子活性にミクログリアにおける変化が反映されなかった可能性が考えられた。そこで平成18年度は、ミクログリアを用いたin vitroの実験を行い、LPS刺激に応じてANG IIが転写因子の活性化を引き起こし、LPSと共にサイトカイン産生を誘導する可能性を究明した。その結果、LPSで刺激したミクログリアにANG1型受容体mRNAの発現があることが確認された。LPS刺激により、ミクログリアのnitric oxide(NO)産生は増加した。ANG1型受容体拮抗薬のlosartanを作用させると、このNO反応は減弱した。ANG IIを作用させると、このNO反応は増強した。LPS刺激によりinterleukin-1(IL-1)濃度が増加したがlosartanにより有意に抑制された。LPSによりマイクログリアの形態は球形から突起を持つ紡錘形に変化したが、その変化はlosartanにより抑制された。LPSによるミクログリアのNF-κBとAP-1の活性化は、losartanにより抑制された。したがって、ANG IIと1型受容体はNF-κBとAP-1の活性化を刺激して、LPSのラットミクログリアへの刺激作用を促進するものと考えられる。以上すべての研究結果から、脳内のANG IIと1型受容体は特にミクログリアのNF-κBとAP-1を活性化して、炎症性サイトカイン産生を促進するものと考えられる。
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