研究概要 |
CMVプロモーターによりラット正常小腸上皮細胞に恒常活性型変異MEK1遺伝子を導入してMEK-ERKのシグナル,を恒常的に活性化させることで,MEK-ERKのシグナルが細胞の生存活性に与える影響や抗癌剤感受性(抵抗性)に与える影響に関して検討した.恒常活性型変異MEK遺伝子導入細胞においては,コントロール細胞に比して著明に生存活性が上昇し,各種抗癌剤に対するIC_<50>の算出においては,MEKの活性化により各種抗癌剤に対する抵抗性が著明に増強した.この抗癌剤に対する抵抗性の機序が,アポトーシス抵抗性を介したものかを明らかにするため,核染色・TUNEL法にて検討した.核染色による形態観察では,アポトーシス抑制を介していると考えられ,また,TUNEL法では活性型変異MEK遺伝子導入細胞においてアポトーシス細胞の減少が認められた.MEK-ERKシグナル経路の活性化により,Bcl-2 familyのBcl-X_L, Mcl-1が高発現することを介して抗アポトーシス作用を示すという報告に基づきウェスタン・ブロットによりアポトーシス関連蛋白を検討した.MEK-ERKのシグナルの活性化によりBcl-X_Lに代表されるanti-apoptotic proteinの発現をが増強し,Bakに代表されるpro-apoptotic proteinの発現の発現が減弱していた. さらにMEK-ERKシグナル経路の下流でcyclooxygenase-2(COX-2)が発現するという報告に基づき,恒常活性型変異MEK遺伝子導入細胞においてCOX-2の発現と,選択的COX-2阻害剤(NS398)の抗癌剤抵抗性に与える影響について検討した.上記細胞にてCOX-2発現の増強が認められ,COX-2選択的阻害剤にて処理すると,恒常活性型変異MEK遺伝子尊入細胞の抗癌剤抵抗性は減弱した.
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