研究概要 |
ES細胞特異的新規ras,ERasは,ES細胞のみに発現し,他のHRas,KRasと異なり変異なしで常に活性化状態にあり,ES細胞の増殖や奇形腫発生に重要であることが報告された.我々はERasの胃癌での発現を発見し,胃癌細胞におけるERasの機能につき検討した.方法:1.9種類の胃癌細胞株と外科的切除胃癌組織から蛋白を抽出し,ウエスタンでERasの発現量を検討した.2.胃癌細胞株のERas強制発現株を樹立し,細胞増殖,PI3K/Akt,MAPK等への影響を検討した.3.ERas強制発現による抗癌剤耐性能について4種類の抗癌剤を用い検討した.Akt下流のmTORの標的分子標的治療薬で抗癌剤との併用が注目されているRapamycinの効果につき検討した.4.マウスの胃粘膜から胃上皮細胞株を樹立し,さらにERas強制発現株を樹立した.マイクロアレイ,ウエスタンによりERas標的遺伝子の検索を行った.結果:1.ほとんどの胃癌細胞株でERas蛋白の発現を認めた.胃癌組織では約75%にERas蛋白の発現を認めたが,正常胃粘膜には発現はなかった.2.ERasはPI3k/Akt系を活性化したがMAPK系は活性化しなかった.3.ERas強制発現によりCPT-11に対する耐性能が有意に増強し,またCPT-11とRapamycinの併用効果がみられた.4.ERas発現で細胞間接着能が低下し,E-cadherinの抑制が認められた.またヒト胃癌組織においても免疫染色でERasの発現が認められ,特に他臓器転移した胃癌に高発現の傾向を認めた.上記の成果は以下の学術集会で発表し,現在英文雑誌投稿準備中である. (1).第17回消化器癌発生学会.ワークショップ.2006年9月.(2).第65回日本癌学会学術総会.2006年9月.(3).DDW-Japan 2006(日本消化器病学会総会)シンポジウム.2006年10.(4).Research Forum.DDW.2007.5.21.Washington.D.C.,USA.(予定).
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