研究概要 |
肝臓での免疫担当細胞の構成は末梢血と大きく異なっており,NK,NKT細胞が,肝臓に存在する全体の単核球のうちの20〜30%ずつを占めるとされる.これより,NK,NKT細胞は肝炎の病態に大きな影響を与えているものと考えられる.実際,HBVの感染においても,感染の初期にはNK,NKT細胞などからのサイトカイン産生(IFN-γ)によりウイルスの排除が進むことが,チンパンジーの感染実験,HBVトランスジェニックマウス(HBV-tg)を用いた実験により示されている.特にNKT細胞は,IFN-γのみでなくIL-4の産生細胞でもあり,NKT細胞の活性化の程度が,肝炎の進展,細胞障害性Tリンパ球(CTL)誘導などによるウイルス排除機構に影響を与える可能性がある.当研究では,NKT細胞がHBV関連抗原特異的CLT誘導に与える影響を,HBV-tg,NKTノックアウトマウス(Jα281^<-/->)を用いて検討した.正常マウス(B10D2)においては,HBs抗原による免疫時に,NKT細胞を活性化する作用のあるα-galactosylceramide(α-GalCer)を同時投与すると,HBs特異的CTL(HBs-CTL)の誘導効率は有意に上昇した.これは,NKT^<-/->ではみられず,NKT細胞の活性化がCTLの誘導効率の上昇に寄与することが示された.次に,通常の免疫方法ではHBs-CTLの誘導が困難なHBV-tgにおいて,同様の方法でCTL誘導の可否について検討した.HBV-tgでは,α-GalCerを併用した場合のみHBs-CTLの誘導が確認され,さらにはCTLクローンの確立も可能であった.抗体を用いたブロッキング実験では,IL-2,CD40/CD40Lによるシグナルが,α-GalCerによるCTL誘導効率の上昇に関与していることが示唆された.NKT細胞は特異的免疫応答の誘導において,重要な働きをしていることが明らかとなった.自然免疫と獲得免疫のクロストークを利用した治療法が,HBV持続感染のような難治性感染症の治療に有用である可能性が示唆された.
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