研究概要 |
ミトコンドリア内膜にはATP感受性K^+(mitok_<ATP>)チャネルとCa^<2+>活性化K^+(mitoK_<Ca>)チャネルが存在し,虚血心筋保護に重要な役割を担っている。本研究では,性ホルモン(エストラジオールとテストステロン)が2つのミトコンドリアイオンチャネルに対してどのような作用を及ぼすか,モルモットの心室筋細胞を用いて検討した。MitoK_<ATP>およびmitoK_<Ca>チャネル活性化の指標としてフラボプロテイン自家蛍光を測定した。エストラジオール(0.1μM)を作用させるとフラボプロテイン蛍光は増強した。MitoK_<ATP>チャネル遮断薬の5HD存在下でエストラジオールを作用させると単独の場合と同様にフラボプロテイン酸化反応が認められたが,mitoK_<Ca>チャネル遮断薬のパキシリン存在下では認められなかった。一方,テストステロン(10μM)を作用させるとフラボプロテイン蛍光が増強した。5HD存在下でテストステロンを作用させるとフラボプロテイン酸化反応が認められなかったが、パキシリン存在下に作用させるとフラボプロテイン蛍光は増強した。また,テストステロンのフラボプロテイン酸化反応はエストラジオールの追加投与により増強した。これらの結果は,エストラジオールはmitoK_<Ca>チャネルを活性化するがmitoK_<Ca>チャネルには影響を及ぼさないことを示唆するものである。テストステロンはアロマターゼによりエストラジオールへと変換されるので,男性ホルモンと女性ホルモンがそれぞれ異なるミトコンドリアイオンチャネルに作用し,おそらくミトコンドリアCa^<2+>過負荷を軽減することで,協調的に虚血心筋保護効果をもたらすと考えられる。
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