研究課題
基盤研究(C)
心筋梗塞や心筋症から生じる重症心不全は非常に予後不良の疾患(5年生存率が50%以下)である。終末分化細胞である心筋細胞は神経細胞・脂肪細胞と同様に増殖・再生能が失われている細胞であり、細胞死が生じた心筋細胞は脱落し間質細胞・線維組織などに置き担わり、その結果、収縮力が低下し心不全に進むことが知られている。この難治性の心不全を克服するためには、その詳細な機序を解明する必要がある。これまでに我々および他の研究室は心筋細胞の細胞死・肥大・アポトーシスなどと心不全の病態との関わりについて多くの研究が行ってきたが、そのメカニズムは未だ十分に解明されているわけではない。我々は以前から非増殖細胞である心筋細胞に存在している細胞周期制御因子の役割について注目し、これらが心筋細胞の肥大やアポトーシスに深く関わっていることを明らかにしてきた。細胞老化は遺伝子によりプログラムされており細胞周期制御因子と深く関係している。細胞レベルの老化は増殖細胞では分裂能の喪失として定義されるが、様々な外的刺激により短期間のうちに細胞老化が誘導されることが近年、明らかにされてきている。この現象は早期老化(premature senescence)と呼ばれ、細胞周期が強制的にかつ不可逆性に停止されることで起こる。我々は早期老化が心筋細胞でも細胞周期制御因子の変化を介して起こっており、心不全の病態機序の一要素を担っている可能性を示唆するデータを得た。つまり、新生仔ラットの培養細胞に、細胞死が生じない低濃度のドクソルビシンにより心筋細胞に老化のマーカーであるsenescence-associated β-galactosidase染色(SA β-gal)陽性細胞が有意に増加し、また短時間のドクソルビシン添加で分裂細胞の心線維芽細胞は分裂回数の減少が生じるという結果が得られた。心筋細胞はドクソルビシンによる早期老化誘導で分裂細胞老化と同様にp16^<INK4a>,p21^<cip1/waf1>,p27^<kip1>が増加しp53のアセチル化が認められた。このことより細胞レベルで早期老化が新生仔心筋細胞に現れ、心不全の一因となる可能性が示唆された。
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