研究課題
基盤研究(C)
糖尿病患者では再灌流療法後や心筋梗塞後での心不全発症率が高く、その生命予後も不良であることが疫学調査等で明らかにされている。この原因として血管病変とは無関係の代謝障害に起因する心筋細胞障害、いわゆる糖尿病性心筋症がその一因と考えられている。しかし、その病態は不明である。私どもは糖尿病でみられる高血糖状態下ではミトコンドリアでの活性酸素種産生が増大し、その結果として細胞死(アポトーシス)が引き起こされるとの仮説をin vitroの幼弱ラット培養心筋細胞系とin vivoの糖尿病モデル動物で検討した。1)in vitroの培養心筋細胞系での検討:心筋のアポトーシスは短期の高血糖で減少し、逆に長期の高血糖状態で増加した。この相反する作用はともにミトコンドリアでの活性酸素種産生によるものであった。虚血耐性を過酸化水素の暴露で評価した。過酸化水素による心筋のアポトーシスは短期と長期の高血糖状態下でともに増加した。アポトーシスの増加に先行して活性酸素種が著名に増大し、細胞内GSH濃度が低下しており、細胞死がレッドクス状態に依存していることを示している。また、高血糖下では熱ストレスによるheart shock protein(HSP)70の発現が低下し、AKtとGSK-3βのリン酸化が低下していた。2)in vivo糖尿病モデル動物での検討:高血糖状態の糖尿病動物モデルで虚血耐性の機序とそのシグナル伝達について検討した。STZ-induced DMでHSPの発現低下とPI3-キナーゼ/AKtシグナル系の活性低下が認められ、この時、HSP70の発現が低下し、虚血耐性が低下していた。この虚血耐性低下はインスリン補充で改善された。インスリンの耐性回復作用は細胞生存シグナルであるPI3-キナーゼ/AKtシグナル系の活性化によることがワートマニンによる抑制作用から確認された。高血糖や糖尿病ではミトコンドリアでの活性酸素種産生増加による酸化ストレス増大とHSP70発現が低下による虚血耐性の低下が示唆された。
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Diabetes 55
ページ: 1307-1315
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Life. Sci. 79
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