研究課題
基盤研究(C)
耳部は上腕より脳に近く、耳介と耳孔があり、しかも浅側頭動脈(内頚動脈との吻合あり)という太い動脈が近くに走っており、イアーピースのような小型な装置を装着し、耳珠と耳孔を利用して小カフにて頭位における血圧を連続的かつ容易に測定できる利点がある。また上腕や指と異なり激しい動きがなく、この部位に血圧測定装着することにより行動の制限が少なくなり、しかもこの部位の頭位血圧(BPc)と上腕血圧(BPb)あるいは心臓との位置関係(両者の静水圧差h)が明確であるのでその測定値を理論的に評価しやすい(両者の関係はBPb=α×BPc+h:α=動脈径による比率、h=静水圧)。実際のCBPM装置の概要は、耳孔部イヤーピースに小カブと小カブ内に小型光電管センサーが組み込まれており、その小カフと耳珠外部の小カフの両者で浅側頭動脈を圧迫できる構造になっており、そのカブの加圧はマイクロポンプで定時的に行い、光電管脈波波形とカブ内の脈による振動(cuff-oscillation)をマイクロコンピューターで分析してSBP(収縮期血圧)とDBP(拡張期血圧)、心拍数(HR)を自動的に算定し記録するものである。その装置を改良し、簡単に耳孔部に装置できる装置を開発し、その精度と実用性について検討を行った。上腕部と比較して、収縮期血圧、拡張血圧ともhを補正しても平均80%低下していたが、相関性は高く(r>0.80)相対的血圧変化は測定できると考えられた。耳孔部イヤーピースとカブは小型で軽量(数グラム)なので、補聴器程度の違和感があるのみで、従来の上腕カブによるABPM(ambulatory blood pressure monitoring)装置より被験者に負担がはるかに少ないものであった。また装着法や光電管脈法の採取法の改良を加えた。この研究をさらに発展させ、耳介部(tragus)内側に連続(一拍一拍)に血圧測定できるようにするため、NTT社MI研究所で開発した超小型レザードプラー血流計を応用した。それは血圧(BP)は血流(BF)と末梢血管抵抗Rの積(BP=BF×R)で表わせるので、この末梢血管抵抗Rを一定にすぼ、BPを連続して測定できる可能性がある。このRは細動脈径(耳介部酸化ヘモグロビン量に比例)により規定されるため、耳介部(tragus)の酸化ヘモグロビン量を測定しカブを用い空気圧で加圧することによりその組織の酸化ヘモグロビン量(実際には吸光度を測定)を一定にすることにより、Rを一定にして連続血圧測定をすることも試みた。さらに、実用化に向けて研究も行った。
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