研究課題
基盤研究(C)
心筋梗塞、脳梗塞に代表される動脈血栓性疾患の発症における血小板活性化と血栓形成のメカニズムを解明するためには、血流条件下で動的に活性化される血小板の活性化動態を評価するシステムが必要となる。われわれは高速レーザー共焦点顕微鏡とピエゾモーターを用いた、動的条件下での3次元リアルタイムイメージング法を開発した(Goto S, et al. J Am coll Cardiol,2005および2006)。本法により、血流条件下の血小板血栓の形成を3次元的にイメージングすることが可能となった 蛍光色素として細胞内カルシウムイオン濃度を反映するFluo-3を用いることにより、血小板内カルシウムイオン濃度のリアルタイムイメージングが可能となった。本法を用いることにより、コラーゲンと相互作用しつつ活性化する血小板内ではカルシウムイオン濃度が周期的に変動すること、このカルシウム流入が血小板表面のGPIIb/IIIaの活性化状態の維持と血栓の安定性の保持に必須の役割を果たすこと、カルシウムの周期的流入にはADP受容体、特にP2Y_<12>が必須の役割を果たすことを示した。血小板膜表面上には多くの膜糖蛋白が存在する。これらの膜糖蛋白の特異抗体に蛍光色素を標識することにより、膜蛋白の局在をイメージングすることが可能となる。研究期間内に論文発表には至らなかったが、流動状態下の膜蛋白の動態をリアルタイムイメージングする方法を確立した。また、GPVI欠損症の症例を用いて本膜蛋白の機能解析を詳細に行い報告した。実際に急性心筋梗塞を発症した症例から治療の一環として採取した冠動脈血栓の病理組織学的検討を行い、ヒトに心筋梗塞を惹起した患者血漿中では血小板とvon Willebrand因子の局在が完全に一致することを示した。さらに、von Willebrand因子を分解する酵素の役割に関する実験的研究を開始した。von Willebrand因子またはvon Willebrand因子を認識するモノクローン抗体を緑色に、血小板を赤色に蛍光標識することにより血栓形成の過程におけるvon Willebrand因子の役割を動的に可視化する。さらに、von Willebrand因子を切断する酵素ADAMTS13が血栓形成の過程において何らかの役割を果たしているかを検証し、研究成果を学会発表した。今後論文化を行う予定である。
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