研究概要 |
1.喫煙によるThymus-and activation-regulated chemokine(TARC/CCL17)産生メカニズムの検討 喫煙により急性好酸球性肺炎(acute eosinophilic pneumonia : AEP)が発症することから、煙草煙懸濁液による肺胞マクロファージからのTARC/CCL17産生を解析した。気管支肺胞洗浄法により採取した肺胞マクロファージを煙草煙懸濁液で刺激し、培養上清中のTARC/CCL17値を測定した。その結果、培養上清中のTARC/CCL17値は刺激群、非刺激群で差を認めなかった。煙草煙懸濁液の濃度を上昇させると肺胞マクロファージの死細胞比率が増加した。以上の結果より煙草煙懸濁液が肺胞マクロファージからのTARC産生を亢進させることはないと結論した。 II.急性好酸球性肺炎の血清診断マーカーの確立 昨年度に得られた結果に、さらに症例数を増やして、急性好酸球性肺炎における血清診断マーーとして、TARC/CCL17を検討した。喫煙、薬剤、真菌吸入が原因で発症したAEP17例を集積えた。肺炎による急性肺障害/急性呼吸窮迫症候群(acute lung injury/acute respiratory distress syndrome : ALI/ARDS)、急性間質性肺炎(acute interstitial pneumonia : AIP)、肺胞出血症候群(Alveolar hemorrhage syndrome : AHS)、健常コントロール(Healthy volunteers : HV)を対照として、血清中TARC/CCL17,eotaxin/CCL11,KL-6,SP-D値を比較検討した。その結果、ROC曲線によるarea under the curve(AUC)は、TARC/CCL17,1.00(95% confidence interval[CI],1.00 to 1.00),eotaxin/CCL11,0.73(95% CI,0.60 to 0.86),KL-6,0.97(95% CI,0.94 to 1.00),SP-D,0.53(95% CI,0.31 to 0.64)であった。また、呼吸困難が出現した日を発症とすると、血清TARCは、末梢血好酸球数の増加のみられない発症初日より高値を示し、ABPの早期診断に寄与すると考えられた。血清TARCは発症後1週間近く高値を呈した。また、好酸球は発症後1週間ほどして末梢血中に増加し、2週から3週後にピークを呈した。以上の結果は、Chest誌にacceptされた。
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