研究概要 |
いろいろな肺傷害の最終段階として肺線維症が惹起ざれるが,その進展過程において肺内の線溶系活性が抑制されていることがわかっている.この病態は難治性であるが,肺内の線溶系活性を元準させることにより,肺の線維化を制限しうることが明らかにされてきた.本研究は,遺伝子治療によって肺内の線溶系活性を操作することにより肺の線維化を抑制できないかを検証することを目的として開始した.肺内の線溶系活性を亢進させる手段として,1)肺内へのウロキナーゼの遺伝子導入,2)線溶系抑制因子であるPlasminogen activator inhibitor-1(PAI-1)の発現抑制,という2つの方策が考えられる.1)へのアプローチとして,ウロキナーゼをコードするアデノウイルスを用いた遺伝子治療を試みたが,炎症惹起作用のため,肺線維症の改善を認めるには至らず,また,ステロイドの同時投与にても,その炎症を抑えることが出来ないことも判明した.2)のアプローチとして,PAI-1を抑制するsiRNAを作製し,その有効性を探索した.その結果,PAI-1に対するsiRNAの経気道投与によって,マウスの肺内におけるPAI-1の産生を抑制しうることを明らかになった.また,ブレオマイシンを投与したマウスに対して,このsiRNAを3-4日毎の経気道投与を行うことにより,ブレオマィシン投与後14日目に発生する肺線維症の程度を軽減しうることも実証した. 以上より,siRNAを直i接経気道投与することが肺内における遺伝子発現抑制に有効であること,さらに,PAI-1を抑制するsiRNAを用いた線溶系抑制因子の抑制を目指す方法は,肺線維症の進展を抑制する,という2点の事が判明したのである.
|