研究概要 |
小細胞肺癌は高頻度に異常を認めるRB遺伝子とp53遺伝子の異常により不死化や増殖能を獲得し、独立して神経内分泌系への転写因子の活性化を得ることが重要である。 (1)Ad-p53とAd-RBの単感染あるいは共感染による神経内分泌系分化誘導転写因子Ash1,Ash1のアンタゴニストであるId1とId2などの発現変動は細胞死の誘導に伴う。 (2)ヒト肺癌幹細胞から非小細胞肺癌と小細胞肺癌への分化の切り替えはAsh1やNotch family(1,2,3)の遺伝子発現が関与するとの仮説に基づいて、20種類のヒト肺癌細胞株でAsh1,Notch family(1,2,3)の遺伝子発現をReal time RT-PCRで検討した。Ash1とNotch1は小細胞肺癌で非小細胞肺癌に比し、相対的に高値で、Notch2,3は逆であった。 (3)RT-PCRによるAsh1とNotch1,2,3遺伝子の発現と、cisplatin, carboplatin, VP-16, amrubicin, irinotecanの細胞株でのIC50値との相関を検討。1つのNotch遺伝子とトポイソメラーゼ阻害剤との間には有意な相関を認めた。 (4)小細胞肺癌においてsonic hedgehogシグナル伝達系阻害剤のCyclopamineとAd-RbとAd-p53の3つの組み合わせについて併用効果をin vitroで検討し、combination index法で解析した。相加効果-拮抗作用を認め、CyclopamineはAd-RbやAd-p53の効果を減弱。 (5)110症例の小細胞肺癌症例でEGFR遺伝子の変異を解析。3例にEGFR遺伝子の変異があり、腺癌とのcombined型であった。小細胞肺癌の癌化経路は幹細胞からAsh1とNotchが分化を規定する経路だけでなく、腺癌からの脱分化による発生など複数経路存在すると考えられた。
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