研究概要 |
TGF-βはNRKI-52E細胞におけるE-cadherinの発現は低下させるとともに、α-smooth muscle actin(α-SMA)の発現を上昇させた。1,25(OH)_2D_3は、TGF-βのこれらの作用に拮抗した。ヒトVDR遺伝子を過剰発現させたNRK-52E細胞において1,25(OH)_2D_3のTGF-βに対する拮抗作用はE-cadherinの発現においては明らかな差を認めなかったが、α-SMAの発現に関してはVDRの過剰発現系において有意に増強された。TGF-βはHK-2細胞におけるE-cadherinの発現を抑制させた。1,25(OH)_2D_3は、HK-2細胞におけるE-cadherinの発現を増加させるだけでなく、TGF-βの作用を抑制した。1,25(OH)_2D_3はHK-2細胞におけるklotho遺伝子の発現を上昇させたが、TGF-βはklothoの発現を有意に低下させた。また、1,25(OH)_2D_3はTGF-βによるklothoの発現抑制作用を有意に阻害した。HK-2細胞におけるklotho遺伝子の発現をsiRNAにより抑制したところ、TGF-βによるE-cadherinの発現抑制作用が有意に増強された。片側尿管結紮腎間質線維化モデルにおいてVDR欠損マウスでは間質へのマクロファージの浸潤および膠原線維の沈着が野生型マウスに比して著明に増加した。さらに、VDR欠損マウスにおけるI型コラーゲンおよびα-SMA遺伝子の発現が野生型マウスに比較して有意に上昇した。ネフロトキシン腎炎後の腎間質線維化モデルにおいてVDR欠損マウスでは、野生型マウスに比して高度の腎間質線維化が認められた。以上の結果から、腎間質線維化の進展にビタミンDは抑制的に作用する可能性が示唆された。
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