研究概要 |
鹿児島大学医学部・歯学部附属病院脳神経センター・神経内科のHTLV-1キャリアーコンサルテーション外来に来院した無症候性キャリアー(HC)のうち文書による説明と同意を得られた181症例を対象に、HTLV-1プロウイルス量、HLA-A^*02,Cw^*08,Tax subtype,TNF-863A/C, SDF-1+801GIAを解析し、HAMリスク計算式に代入してHAM発症のOddsを計算した。カットオフ値はROC曲線から0.78とした。各症例のOddsと臨床症状、抗HTLV-1抗体価、各種免疫学的パラメーターとを比較検討した。Oddsが高い群(≧0.78)において、低い群(<0.78)に比べて下肢深部腱反射が充進している症例が有意に高く、臨床検査値においても、Oddsが高い群(≧0.78)において、低い群(<0.78)に比べて異常リンパ球数(p=0.Oll)とパーセンテージ(p=0.OlO)が高い症例が有意に多かった。よって、我々の計算式はHTLV-1キャリアーの経過観察、HAM早期発見に有用であると考えられた。一方、HAM患者、HCの末梢血単核球中HTLV-1特異的CD4,CD8陽性T細胞をHAM感受性classI, classIIアレルとエピトープペプチドで作成したtetramerを用いて検出し、頻度、フェノタイプ、サイトカイン産生能、TCRレパートリー、CDR3領域、細胞障害活性を解析した。HAM患者では、HTLV-1特異的CD4,CD8陽性T細胞ともにHCに比較して有意に高頻度であり、TCR解析から、HAM発症関連MHCとエピトープペプチドによりin vivoで選択されたものであることが示された。本研究により、HAM発症関連因子の作用メカニズムを解明し、HAM発症予防、発症予測、早期治療介入を可能にするための貴重な基礎データが得られた。
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