研究概要 |
RNA編集により生じる変異ユビキチンUBB+1を候補分子として脳虚血におけるRNA編集機構とユビキチン・プロテアソーム系(UPS)の制御機構の解明を目的に研究を行った.砂ネズミー過性全脳虚血モデルによる海馬CA1領域における遅発性神経細胞死を作製し,CA1領域における変異ユビキチン(UBB+1)の局在と経時的変動を検討した. 砂ネズミの両側総頚動脈を5分間結紮後に再灌流し,1,2,3,4,7日後に脳を取りだしUBB+1のmRNAと蛋白レベルについてRT-PCR法と免疫組織染色およびWestern Blotを用いて経時的に検討した.海馬CA1,CA3,歯状回において再灌流1日後よりUBB+1 mRNAの発現を確認した.UBB+1 mRNAの発現は経時的に変化をみとめず,7日後まで発現が持続した.UBB+1蛋白は,再灌流2日目にCA1,CA3,歯状回において合成を確認したが,3日目以降はCA1のみに蛋白合成が持続した.さらにCAIに合成をみとめたUBB+1蛋白は錐体細胞の形態学的変化に先行して観察され,細胞死のマーカーであるTUNEL染色に陽性を示す細胞に局在した.以上の研究結果より,脳虚血ストレスにより変異ユビキチンが発現・合成され,UPSを選択的に抑制することで遅発性神経細胞死が誘導される可能性が示唆された.本結果についてはNeuroscience誌に報告し,現在掲載予定となっている. また,ユビキチンの分解に関与するプロテアソームとの関連を神経培養系の低酸素負荷モデルを用い検討した.プロテアソームにより分解されるhypoxia-inducible factor-1 αと神経細胞保護の関連を証明し,Journal of Neurochemistry誌に報告し掲載された. 今後,脳梗塞におけるRNA編集産物であるUBB+1をターゲットとした新規脳保護療法の開発に向けた研究を継続する.
|