研究課題
基盤研究(C)
腎症の発症・進展に関与する新たな治療標的分子を探索するため、2型糖尿病モデル動物であるdb/dbマウスとコントロールマウスであるdb/mマウスの腎組織よりmRNAを抽出し、DNAマイクロアレイ法を用いて経時的遺伝子発現プロファイルの作成を試みた。この経時的遺伝子発現プロファイルより、腎症の発症に伴い発現量の増加・減少をきたす遺伝子群のクラスター分類を検討したところ、ストレス応答性分子シャペロンであるHeat Shock Protein(以下HSP)に属する遺伝子群の遺伝子発現が、糖尿病モデル動物の腎臓において経時的に抑制されていた。一方、HSP70蛋白の発現は、糖尿病初期には増加していたが、週齢が経過するに従い減少していた。また、培養メサンギウム細胞を用いた検討では、3日間の高糖濃度条件下培養でHSP70発現が増加するものの、酸化ストレス刺激によりHSP70蛋白の分解亢進が認められた。さらに、HSP70過剰発現メサンギウム細胞では、酸化ストレスによるアポトーシスの抑制が認められた。また、腎保護効果を有するエリスロポイエチンによりHSP70蛋白の発現増加が認められた。以上の結果より、2型糖尿病モデルマウスの腎臓において、糖尿病初期(生後直後より)における高血糖からの生体防御反応のひとつとしてHSP70蛋白量が増加するものの、長期にわたる糖尿病状態のために惹起された酸化ストレス亢進により、HSP70蛋白の発現抑制ならびに蛋白分解が促進されることで生じる抗酸化ストレス防御機構の破綻が腎症の発症・進展に関与している可能性が考えられ、HSP70蛋白を増加させることが糖尿病腎症の発症・進展抑制につながる可能性が示唆された。
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J Am Soc Nephrol 19
ページ: 321-328
J Am Soc Nephrol 19(2)