研究概要 |
代謝症候群は、内臓肥満・高血圧症・糖代謝異常・脂質代謝異常を合併し、虚血性心疾患が発症しやすい病態である。その発症メカニズムについて1.低比重リポ蛋白受容体関連蛋白5(LRP5)と、2.リポ蛋白リパーゼ(LPL)、肝性リパーゼ(HL)などに注目して検討した。 1.ヒトLRP5遺伝子の一塩基多型(SNPs)[Q89R(a/g),N740N(c/t),IVS10+6(t/c),V1119V(a/g),IVS17-30(g/a),A1330V(c/t)]の頻度を代謝症候群(n=74)と健常対照群(n=172)とで比較した。IVS17-30多型g/aはminor alleleであるaが代謝症候群で有意に増加していた。一方、アミノ酸置換を伴うQ89RとA1330Vには有意な差は認められなかった。また、その他の多型にも差は認めなかった。 IVS17-30g/a多型が代謝症候群の発症・進展に直接関与しているのか、あるいは連鎖不均衡にある別のLRP5変異による間接的な影響か、さらに検討を要する。 2.高トリグリセリド(TG)血症を示した患者から、トランスポゾンによりLPL遺伝子に欠失が生じた例、不活性な変異LPL蛋白が血中に存在する例、HL活性低下による例を明らかにした。さらに、代謝性心筋症からAGL遺伝子変異が原因である例を同定した。また、Lp(a)高値例に虚血性心疾患が多いことを示した。 こうした結果から、代謝症候群の発症には多様な因子が関わっていることが示唆された。
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