研究概要 |
血管内皮プロテインCレセプター(endothelial cell protein C receptor, EPCR)は、血液凝固因子の一つであるプロテインCの特異的受容体である。我々は、この分子に対するモノクローナル抗体を作成し、その機能が血管内におけるプロテインCの活性化反応に必須であることを明らかにしてきた。我々はこの分子が前駆体のプロテインCのみならず、活性化プロテインC(activated protein C, APC)1とも特異的に結合することを見いだした。また、この分子が癌において発現誘導されることを見出し、癌細胞上で発現しているEPCRの機能により、APCを産生することでマトリックスプロテアーゼの活性化を誘導する可能性を示唆した。また共同研究により、この分子の発現が血管内皮以外にも発現しており様々な機能を発揮していることを明らかにした。例として、ケラチノサイトにおいてEPCRが発現しており、損傷修復に機能していること(Xue M. et al. 2005 J. Invest Dermatol)、マイクロパーティクル上にもEPCRが存在し、凝固や炎症を制御していること(Perez-Casal M. et al. 2005,Blood)等を報告した。 また、APCはエンドトキシンショックの治療薬として期待されているが、この機能にもEPCRの機能が重要な役割を果たしている。エンドトキシンの本態は、Lipopolysaccharide(LPS)である。LPSは様々な細胞の応答を誘導することが知られているが、多くの反応は細胞表面上のシグナル伝達受容体であるToll-like receptor 4(TLR4)/MD-2複合体に依存している。しかし、LPSは直接TLR4/MD-2に認識されるのではなく、予め血中のLPS-binding protein(LBP)やCD14によりプロセスされる必要がある。APC/EPCR/PAR1の経路が、この複雑な経路のどの段階に作用しているのかを明らかにするために、CD14,LBP, MD-2,TLR4のリコンビナント蛋白を作成し(Kohara J. et al. CDLI,2005,Kohara et al. Protein Expr Purif,2006,Tsuneyoshi N. et al. Cellular Immun),再構成系を構築したところである。今後、この系を利用して、APC経路をTLR経路の関係について明らかにしたい。
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