研究概要 |
移植片対宿主病(GVHD)の発症機序は、二次リンパ組織内で、ホスト抗原提示細胞により活性化されたドナーT細胞が、標的臓器へ浸潤することによって引きおこされると考えられており、この過程が増幅されることにより、組織傷害が高度になる。この過程にはケモカインの関与が予想され、ケモカインが急性GVHDの臓器傷害の治療標的になりうるかどうかを検討するのが本研究の目的である。 まず、1)動物モデルとして、MHC抗原不適合急性GVHDモデルマウス(ドナー:C57BL/6(B6)、ホスト:(C57BL/6 X DBA/2)F1(B6D2F1))を用いた。ホストマウスには13Gyの放射線を全身照射した。2)標的臓器(肝、腸管)の急性GVHDによるケモカインの発現変化を経時的に検討した結果、肝においては、GVHD初期より、Th1ケモカイン(Mig/CXCL9,IP-10/CXCL10)、Th2ケモカイン(TARC, MDC)、MIP-1alpha,-1beta, RANTES, KCの発現増強が認められた。一方、腸管においては、主に、Th1ケモカイン,MIP-1alpha,-1beta, MCP-1,-3,LTNの発現増強がみられた。以上より、肝と腸管の標的臓器の候補ケモカインとして、Th1ケモカインとそのレセプターであるCXCR3に焦点をしぼった。3)GVHD誘導時よりIP-10アンタゴニスト投与群は、コントロール群に比較して、有意に臓器傷害が軽減した。4)CXCR3を発現させたCD4+CD25+抑制T細胞(Treg)を作成し、移入することで、肝、腸管の標的臓器に集積させ、GVHDが軽減するかどうかを検討した。その結果、CXCR3-Treg細胞移入群は、Treg細胞移入群に比較して、臨床的にも有意にGVHD変化は軽減し、病理組織学的にも標的臓器のGVHD変化は著明に軽減した。
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