研究概要 |
ガレクチンファミリー分子は,免疫炎症応答性制御に深く関与していると予想される新たな動物レクチンとして注目を集めている.我々は,ガレクチン(Gal)-9の全身性自己免疫疾患とくに関節リウマチ(RA)への関与を調べるために,RA滑膜組織中の各ガレクチン分子の発現と培養RA滑膜細胞へのGal-9の生物学的作用を検討した.また独自に作製した安定化ガレクチン(Gal)-9改変体(sGal-9)投与によるRA関節炎モデルに対する影響について検討した.具体的には,RA滑膜組織,変形性関節症(OA)滑膜組織中のGal-1,3,8,9のmRNA発現,局在分布について検討を行った.各種ガレクチン刺激によるRA滑膜細胞増殖,アポトーシス誘導への影響を調べた.さらにDBA/1Jマウス,DA/Slcラットを用いII型コラーゲン誘導関節炎(CIA)モデルを作製した.sGal-9を腹腔内または静脈内に投与し,関節炎に対する修飾効果を関節炎スコアのモニター,組織学的およびX線学的に検討した.その結果,Gal-1,3,8とは異なりGal-9はmRNA発現を伴ってRA滑膜細胞,リンパ濾胞,濾胞内血管内皮細胞に局在を認めた.OA滑膜組織のGal-9陽性細胞は極少数であった.sGal-9は培養RA滑膜細胞増殖反応を抑制とともにアポトーシスを誘導した.CIA関節炎モデルのsGal-9投与群で関節炎スコアの有意な減少とX線学的関節破壊所見の軽減を認めた.同滑膜病変組織中ではアポトーシス陽性細胞集簇を認めた.以上の結果より,sGal-9によるRA滑膜細胞アポトーシス誘導,RAモデル関節炎重症度の減弱効果が確認された.Gal-9はRA滑膜増殖反応の負の制御因子として作用していると考えられ,sGal-9を用いた新規の抗リウマチ療法開発の可能性が示唆された.以上の実験データに関して現在,論文発表を準備中である.
|