以前の報告において、我々は神経精神ループス(CNSループス)患者血清および髄液中に抗TPI抗体がほぼ半数に陽性であることを確認した。今回我々は、抗TPI抗体が病原性をもつ抗体か明らかにするため、以下の実験をおこない、以下の結果を得た。 (1)抗TPI抗体がCNSループス患者髄液中でTPIと結合し、免疫複合体を形成しているか? MACSシステムを用いて患者髄液中から免疫複合体を分離し、それを抗原としてSDS-PAGE→Western blottingをおこなって抗TPI抗体と反応するか試みた。その結果、CNS患者髄液中にはTPI-抗TPI抗体免疫複合体が存在することが判明した。 (2)CNSループス患者髄液中のTPI-抗TPI抗体複合体は髄液中で補体を活性化しているか? CNSループス患者を髄液中TPI-抗TPI抗体複合体陽性群と陰性群に分け、それぞれの群で補体活性化分解産物であるC3d濃度(インデックス)を測定したところ、陽性群において有意に上昇を認めた。以上より、CNSループス患者髄液中に存在するTPI-抗TPI抗体複合体は、髄腔中において補体を活性化することでCNSループスの病態に関与する可能性が示唆された。 (3)抗TPIモノクロナール抗体の作成と正常マウスへの投与 ウサギTPIをマウスに免疫することにより、抗TPIモノクロナール抗体の作成に成功した。抗TPIモノクロナール抗体をBalb/cマウスに投与したが、特に異常行動は示さなかった。BBBにより抗体が髄腔内に移行しないためと考え、ハイブリドーマを直接脳内に投与、その後脳内の抗体の沈着について観察したところ、脈絡膜への抗体の沈着が認められた((3)に関しては未発表)。
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