研究概要 |
Noonan症候群類縁疾患は小児先天奇形症候群で、顔貌異常、低身長、心奇形、精神遅滞等を伴う症候群である。チロシンホスファターゼSHP-2をコードするPTPN11遺伝子がNoonan症候群の半数に同定されてきたが、あと半分のNoonan症候群と類縁疾患にSHP-2遺伝子変異はみつかっておらず、その原因は依然不明である。この研究の目的はいまだ原因不明のNoonan症候群とその類縁疾患の原因を解明することである。 申請者らはSHP-2変異陰性のNoonan症候群やそれに類似する症候群(Costello・CFC症候群)の原因を明らかにするために、候補遺伝子検索を開始し、2005年にCostello症候群の原因が、癌原遺伝子であるHarvey-RAS(HRAS)であることを報告し(Aoki et al., Nature Genetics,2005)、2006年にCFC症候群の原因がKirsten-RAS(KRAS),B型RAFキナーゼ(BRAF)であることを世界に先駆けて報告した(Niihori, Aoki et al.Nature Genetics,2006)。これらの発見によりRAS/MAPKシグナル伝達経路上の分子の異常が臨床的に類似する先天異常症の原因であるという新しい疾患概念を確立した(Aoki Y et al,2007)。日本とヨーロッパのCFC症候群54人において遺伝子解析を行い、KRAS, BRAF, MAP2K1/2の遺伝子変異をそれぞれ3人、24人、8人に同定した。このうち25人に対し81項目の臨床症状を収集したところ、これまでにCostello症候群で特徴的とされていた手足の深いしわ、色素沈着、関節の可動性亢進が遺伝子変異陽性のCFC症候群の30%に見られた。これにより、Costello症候群とCFC症候群の重複を示した(Narumi Y, Aoki Y et al.2007)。
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