研究概要 |
(1)新生児発症糖尿病、小児期発症糖尿病、妊娠糖尿病、成人発症2型糖尿病を含む家族性糖尿病の1家系についてゲノムワイド連鎖解析の上、候補遺伝子の塩基配列決定を行い、Kir6.2遺伝子の変異を同定した。また、パッチクランプ法による生理学的検査にて本変異をもつATP依存性カリウムチャンネルは常時オープンする傾向にあることを確認した。本遺伝子の変異は、英国のグループが新生児永続型糖尿病の原因遺伝子となりうる可能性を示唆していたが、我々の研究の結果、成人発症糖尿病を含む多彩な糖尿病の原因となりうることを初めて報告した。 (2)小児期発症糖尿病患者(乳児・新生児期発症者を含む)を含む家族性糖尿病家系を全国より35家系集積し、インフォームドコンセントを得たうえ家系構成員からのゲノムDNAを収集した。 (3)これらの家系について、本研究の初年度の成果として新たな糖尿病遺伝子として同定したKir6.2(KCNJII)、およびその他の既知のMODY(Maturity-onset diabetes of the young)遺伝子(TCF1,TCF2,HNF4A, GCK, IPFI, NeuroD1)について全エクソンの塩基配列決定を行った結果、新たに4家系にKir6.2の変異を認め、本遺伝子の乳児新生児糖尿病遺伝子としての重要性と同様に、MODY様の家族性糖尿病の原因遺伝子としての役割を確認した。従来本邦ではMODY家系の20%前後しか既知のMODY遺伝子で説明されないことから、他のMODY遺伝子が存在することが推定されていたが、我々の検討からKir6.2も本邦におけるそのような遺伝子の一つであることが明らかになった。 (4)さらに本邦では極めてまれにしか報告されていなかったGCK遺伝子、HNF4A遺伝子の変異による家系も新たに複数同定し、これらの変異による家族性糖尿病が本邦においても決してまれでないことを証明した。
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