研究概要 |
川崎病の病因を検索するために、プロテインチップによる川崎病患児血清の蛋白プロフィールの解析を行った。【対象および方法】6か月未満発症の川崎病患児(KS群)8検体と6か月未満の発熱性疾患の8検体(正常群)で、プロテインチップによる蛋白パターンを比較検討した。【結果】KS群と正常群で絞り込まれた20peakの中で、最もROC areaが広かったのは、陽イオン交換チップ(pH4)のn/z 11,524(KS;38.8±24.4,正常;2.8±5.0,p=0.0011,ROC area 0.984)と11,681(KS:56.5±42.9,正常:5.1±9.7,p=0.0023,ROC area 0.938)だった。これらのpeak強度は病日、白血球数、CRP、AST、ALT、LDと相関しなかった。KS群で有意に低値だった9peakの中でROC areaが最も広かったのは銅修飾チップのm/z 28,008(p=0.0016,ROC area 0.984)だった。 以上のスクリーニング実験で絞り込まれたマーカー候補蛋白について新たな検体で確認実験を行った。【対象および方法】6か月末摘発症のKS群8検体と6か月未満の正常群の5検体で、プロテインチップによる蛋白パターンを比較検討した。【結果】陽イオン交換チップ(pH4)のm/z 11524と11681はコントロールのピーク強度が高値だった。銅修飾チップm/z 28008は川崎病とコントロールでほぼ同程度のピークだった。2年間の結果を再検討しバイオマーカー候補の再度の絞込みを行ったが、2年分ともに有意な差(p<0.05)を認めたピークとしてm/z 17389(陽イオン交換チップpH4)を認めた。P<0.1のピークとして陽イオン交換チップpH4のm/z 17405、14052、8702、14056を認めた。これらのピークは全て川崎病患児に低値のピークであり、川崎病特異的に高値のピークは見出せなかった。 【結語】川崎病急性期に特異的に増加するピークは得られず、抗体価別検討でも病因に結びつくピークは得られなかった。しかし、川崎病のバイオマーカー候補の絞り込みを行うことはできた。今後、多数検体での検討を進めてゆく。
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