研究概要 |
パルボウイルスのB19のプロモーターを用いたBドメイン欠如型のAAV-FVIIIベクターを作製した。In vitroでは、CAGプロモーターを用いたDual VectorによるFVIIIの発現量と比較して、約85%と十分な発現が得られたので、AAVの血清型の内、筋肉に対する親和性が高いとされるAAV1ないしAAV9のベクターをヘルパーフリーシステムにて作製した。これらのベクターを用いてマウス(C57BL/6マウス,5週齢)の前頸骨筋に筋注して、その発現を2週間ごとに採血して血中のヒトFVIII抗原をELISA法にて測定した。残念ながら、十分な発現はAAV1ベクター、AAV9ベクターともにみられず、さらにBethesda法による中和抗体の測定によって、2週後から徐々に中和抗体が上昇する事が確認された。この中和抗体の産生を抑制するために、Nature Medicine 12(5),p585-591,2006を参考にして、FVIIIのcDNAの下流に血液系の細胞のmicroRNAに感受性のあるシーケンスを付加した。この目的は、筋肉中にある樹状細胞に導入された場合にはFVIIIが産生されず、抗体産生の抑制されることを期待されるという事であった。このシーケンスを付加した構造をもつAAV1およびAAV9ベクターを作製して同じく,5週齢のC57BL/6マウスに筋注してヒトFVIIIの発現を観察した。どちらの血清型のベクターを筋注したマウスでも、FVIII抗原は測定感度以下であり、筋肉細胞中でも付加したシーケンスはmicroRNAに感受性があると考えられた。Bethesda法による中和抗体の測定でも、抗体は検出されず、これは抗原の発現が無いためと考えられた。
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