研究概要 |
私共はこれまでの研究において、Differential display法やマイクロアレイ法を用いて、神経芽腫や肝芽腫の臨床的及び生物学的特徴に関連した、多くの遺伝子群を同定した。また、マイクロアレイ法によって得られた遺伝子発現プロファイルから、生物学的及び臨床的に信頼性の高い情報を抽出するためには、統計学的解析法と教師付き学習法や教師なし学習法などのアルゴリズムを併用するのが、有効な方法の一つである事を示した。現在私共は、ゲノム情報を用いた遣伝子発現解析手法と癌の染色体解析手法とを併用して、発生頻度が低いためにあまり研究されていない腎横紋筋肉腫様腫瘍の分子プロファイルの解析を行っている。 私共が平成17年度よりおこなった研究では、腎横紋筋肉腫様腫瘍における生物学的特徴の解析や、診断及び治療に役立つと思われる遺伝子を同定するため、先の研究で明らかになった腎横紋筋肉腫様腫瘍組織の中で発現異常を示す遺伝子群のうち、遣伝子コピー数の異常を示す遺伝子群の探索を試みた。腫瘍組織内で発現変動が比較的大きな4遺伝子(CRABP2,DDR2,MMP7,IL1R1)を選択し、各遺伝子の腫瘍細胞内における遺伝子コピー数の異常を、各染色体領域に対するbacterial artificial chromosome clones (BAC)を用いたfluorescence in situ hybridization法により検討した。その結果発現変化が見られた遺伝子群のうち、今回検討しえたCRABP2,DDR2,MMP7,IL1R1の4遺伝子については、遺伝子コピー数の腫瘍細胞内における異常は見られなかった。 本研究により、先の研究で明らかになった腎横紋筋肉腫様腫瘍におけるCRABP2,DDR2,MMP7,IL1R1の発現異常は、腫瘍細胞内における遺伝子コピー数の異常によるものではないと考えられた。今後は本腫瘍における発現変動を示す遺伝子のうち、遺伝子コピー数の異常を示す遺伝子群を網羅的に探索する事により、本腫瘍における生物学的特徴の解析や、診断及び治療に役立つと思われる遺伝子群の同定が可能になると思われる。
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