研究概要 |
小児悪性リンパ腫新規診断症例133例について、HE染色、免疫染色(CD3,CD4,CD8,D15,CD20,CD30,CD79a, EMA, GranzymeB, Ki-67)、EBERをprobeとしたin situ hybridizationを施行し、病理診断、組織分類を行った。さらに、RT-PCRおよび免疫染色によりCoxx-2発現群、非発現群とに分けた。Mature B-cell lymphomaではDiffuse large B-Cell lymphomaとBurkitt lymphomaの鑑別を厳密に行うために、c-myc遺伝子の転座の有無をパラフィン切片を用いたFISH法にて検討した。現在までに26例について検討を行い、19例で良好なシグナルが検出できた。Burkitt lymphomaでは、10例中9例でc-myc 転座が認められ、うち8例がt(8;14)であった。Diffuse large B-cell lymphomaでは9例中c-myc転座が認められたのは1例のみであった。Mature B-cell lymphomaでは26例全例、EBER-ISH陰性で、EBウイルスは検出されなかった。Diffuse large B-cell lymphomaとBurkitt lymphomaの鑑別は通常のH&E染色による組織像のみでは困難な場合があり、新WHO分類ではBurkitt lymphomaの診断にKi-67陽性率95%以上(ほぼ100%)という基準をもうけているが、さらにFISH法でc-myc転座の有無をみることににより厳密な鑑別が可能となった。Cox-2発現は組織型により差がみられ、anaplastic large cell lymphoma(ALCL)でCox-2発現が高い傾向がみられた。ALCLにおいてCox-2発現群と非発現群での網羅的遺伝子解析を行ったが、有意差は認められなかった。ただしALCLでは、Cox-2発現群と非発現群のいずれもcyclin D3,BCL-6の発現が高かった。cyclin D3, BCL-6は一般にgerminal center B-cellで発現がみられるが、Intrafollicular T-cell, follicular B-helper T-cellでも発現するとされており、ALCLの細胞起源を考える意味で興味深い結果であった。
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