研究課題
基盤研究(C)
乾癬は角化異常によって生じた局面が長期間、場合によっては一生続く難治性皮膚疾患である。表皮細胞の増殖と分化に異常が生じるが、その病態は複雑で未だ全体像が明らかになっていない。私たちはE-FABPに着目しで乾癬の病態の解析をはかった。E-FABPは脂肪酸結合タンパクファミリーの1つである。E-FABPは乾癬表皮で過剰発現していることから、E-FABPは表皮細胞の制御を介して乾癬の病態に関わっているのではないかと私たちは予想した。そこで、E-FABP遺伝子を欠損したマウスを用いて解析を行った。脂肪酸結合タンパクファミリーのうち表皮細胞ではE-FABPのみが発現しているので、他のファミリー遺伝子の影響を受けることなくE-FABPの働きを明らかにしやすいと思われた。E-FABP遺伝子欠損マウスから表皮細胞を分離培養して解析したところ、E-FABPは細胞遊走に関わること、さらに表皮細胞の分化を調節していることがわかった。E-FABP欠損した表皮ではインボルクリンの発現が低下していたが、これはE-FABPが過剰発現している乾癬表皮でインボルクリンが過剰発現していることと合致していた。次に、E-FABPが分化を制御する機序を明らかにすることを行った。表皮細胞の分化は様々なシグナル伝達機構によって調節されていることが明らかになっている。E-FABP欠損した表皮でこれらのシグナル活性を調べたところ、NF-κBの活性が低下していることがわかった。これまでにE-FABPの下流で働くと報告されていたPPARの活性に変化は見られなかった。私たちの解析結果は、E-FABPがNF-kB活性を正に調節することで表皮細胞を調節していることを示している。よって乾癬では過剰なE-FABPによってNF-kB活性が上昇して表皮細胞の恒常性が損なわれている可能性があると予想される。
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