研究概要 |
結節性硬化症におけるp40の役割や、p40とhamartin, tuberinの分子間相互作用を調べる為に、HeLa細胞の抽出物をtuberin, hamartin、p40に対する抗体で免疫沈降した物各々に対して、tuberin, hamartin, p40に対する抗体を用いてウェスタンブロテイングを施行し、各蛋白の相互関係を解析した。その結果,hamartinとp40が共沈しており、hamartinとp40が結合している可能性が示唆された。さらに、p40のSiRNAを作製し、p40の遺伝子をノックダウンし、tuberin, hamartinの変化を調べた。その結果、p40をノックダウンすることにより、tuberinが増加する事がわかった。一方結節性硬化症由来培養細胞にp40を強発現させると、正常細胞に比して、著明なアポトーシスの増加が起こる事も確認した。従ってp40の結節性硬化症における作用機序として次の様な仮説モデルを考えた。p40はhamartinと結合しているが、hamartinとp40の結合が減ると、遊離のp40はアポトーシスを誘導し、細胞死を引き起こす。一方、p40との結合が減って増加した遊離のhamartinはtuberinと結合し、tuberinとhamartinの複合体が増加して、Rhebの活性を抑制する。従ってhamartinが少ない結節性硬化症の細胞では、p40を強発現させると、遊離のp40が著明に増加し、アポトーシスの増加が引き起こされる。アポトーシスに陥った細胞は細胞死を引き起こす為、結果的にp40が少ない細胞のみが生き残ってくると考えられた。結節性硬化症においてp40が特異的にアポトーシスの著明な増加を引き起こすのであれば、今後p40を結節性硬化症の腫瘍細胞に導入する事によって腫瘍にアポトーシスを引き起こし、腫瘍の縮小治療に利用できる可能性も示唆された。
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