研究概要 |
CD22はB細胞表面に発現する分子でB細胞の機能調節と免疫寛容の維持に関与する。高齢のCD22欠損マウスを用いて,CD22の発現量低下と加齢がB細胞の腫瘍化に及ぼす影響について検討した。CD22欠損マウスの腎臓の組織像を検討したが腎炎は認められなかった。半数のCD22欠損マウス(7/14)において脾臓にB細胞の巣状の稠密な浸潤像が認められたが野生型マウスではB細胞の稠密な浸潤を認めたものはなかった。CD22欠損マウスのうちの2匹では,腎臓に異型B細胞が巨大な集塊を形成しB細胞リンパ腫の組織像と考えられ,脾臓にもB細胞のびまん性増殖像がみられた。平成19年度には脾臓のリンパ腫の表面マーカーなどを解析したが,7匹中1匹ではCD5陽性のB細胞リンパ腫を認めた。脾臓細胞の免疫グロブリンH鎖DJ領域の遺伝子再構成の検討では,異型Bリンパ球の浸潤を認めた脾臓ではmonoclonalityが認められ,リンパ腫であることが確認された。これらのB細胞の腫瘍化の機序に関連して,高齢のCD22欠損マウス由来B細胞における活性化マーカーCD44やクラスII抗原の発現量増加を明らかにした。この結果からB細胞の活性化が示唆されたが,このことを機能面から確認するため高齢のCD22欠損マウスの抗体産生能を検討した。その結果高齢のCD22欠損マウスではIgGとIgMの産生増加,抗DNA抗体などの自己抗体産生増加が認められ,B細胞が活性化状態にあると考えられた。以上の結果から,CD22の欠損と加齢はB細胞の活性化を介して,その腫瘍化を引き起こす可能性が示唆された。
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