研究概要 |
Methylazoxymethanol(MAM)を妊娠ラットに投与し胎仔の神経発達を障害することによる統合失調症ラットモデルの妥当性を検討した。MAMの神経発達障害は神経発達の時期によってその内容が異なるため,妊娠17日(GD17)にMAMを母ラットの腹腔内に25mg/kg投与した。出生21日の仔ラットの脳を取り出し,主に海馬での細胞構築の異常を組織病理学的に検討した。その結果,海馬における神経細胞の配列の異常や皮質の層構造の形成異常が観察され,MAM処置によって神経発達が障害されたたラットが作成できることが示された。つぎに,この胎仔期にMAMが投与されたラットの幼若期(生後7日)に,乱用薬であるmethamphetamineを慢性に負荷し(5mg/kgを1日1回,5日連続皮下投与),脳内のドーパミン・トランスポーター(DAT)の機能を,黒質と腹側被蓋野におけるDAT mRNAの発現を指標に検討した。DAT mRNAはMAM処理によっても変化しないようであった。同時に,辺縁系および大脳皮質におけるアポトーシス関連タンパク質であるBcl-2とBaxの発現を免疫組織化学的に検討した。その結果,両者の発現は対照群と異なることがなかった。このことから,胎生期のMAMは確かに海馬や大脳皮質の細胞構築の形成を障害するが,慢性のmethamphetamine投与が誘発するとされている神経細胞死やDAT機能の低下に対しては,影響を与えないことがわかった。したがって,胎生期MAM投与によって神経発達が障害されたラットでも,methamphetamineに対するDATやapoptosis関連タンパク質の感受性には変化がないことが示された。
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