研究概要 |
【背景と目的】脳血流SPECT画像によるアルツハイマー病(AD)診断の精度を向上させる目的で,数値的画像診断の可能性を高めるべく,因子分析法を応用発展させた因子得点加重加算法(仮称,以下因子得点加重加算法と記載)を開発し,臨床応用を検討した. 【方法】1)健常者(NC)19例,AD患者22症例を対象とし,対象者のIMP脳血流SPECT画像について3DーSSP統計画像処理を行い,平均値で正規化したデータを因子分析した.2)ADの特徴を示すと考えられる固有値の大きな因子スコア画像を抽出し,鑑別に最適化されるよう,症例ごとの因子得点を正規化し二乗和をとり,症例の得点とした.3)これらのデータを基本データセットとして用い,MCI(mild cognitive impairment)患者25症例について数値診断を行った.4)数値診断の結果について画像診断所見と対比を行うとともに追跡調査結果の判明した10例については追跡結果との対比を行った. 【結果】1)因子分析の結果,NCとADのデータセットにおいては,後部帯状回,楔前部,頭頂側頭連合野,側頭葉内側,前頭葉下面における脳血流の変動が因子スコア画像として得られた.また,NCとMCIのデータセットにおいては,後部帯状回,楔前部,頭頂側頭連合野における脳血流の変動がADと共通する因子スコア画像として得られ,ADとMCIの類似性が確認された.3)MCI患者25症例について因子得点加重加算法を用いて数値診断したところ,症例毎の得点は健常者からAD患者の範囲までランダムに分布していた.4)画像診断所見との対比では25例中21例で視察による画像診断の結果と一致していた.5)3年間の追跡調査結果の判明した10例についてADへのコンバートの有無と数値診断の結果を比較すると10例中8例で因子得点加重加算法によりADと診断されていた. 【結論】多変量解析を応用した因子得点加重加算法はADの画像的特長を正しく捉えており,MCI段階でのADの早期診断に役立つ可能性が示唆された.
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