研究概要 |
1.サイトメガロウイルス(CHV)特異的エフェクターメモリーT細胞の認識エビトープ、表面マーカー:マウスCMV(MCMV)の抗原エピトープとして報告されている7つのペプチドのうちM123を認識するMHC/multimerを作成し、MCMV感染6〜12ヶ月後の肺でのメモリーT細胞を調べたところメモリーT細胞の殆どがこの抗原ペプチドを認識しており、CD69(活性化マーカー)、CD44(メモリーマーカー)を表面に発現していることがわかった。 2.CMV特異的メモリーT細胞の産生・維持・増殖におけるサイトカインの役割:従来、メモリーT細胞の維持・増殖にはIL-2,IL-7,IL15が関与していることが報告されている。一方、我々はMCMV感染SPFマウス肺では全リンパ球のうち約10%がM123を認識するMCMV特異的メモリーT細胞であるのに、MCMV感染無菌マウスではその頻度は1%以下であることを観察した。そこで、今回、本研究で新たに確立したリアルタイムRNA-PCR法にてMCMV感染SPFマウスと無菌マウスのIL-2,IL-7,IL15のmRNAの発現レベルを比較したところ、非感染マウスに比べると発現量は著しく多いものの、両マウス間には全く差が認められなかった。従って、メモリーT細胞の維持・増殖にはIL-2,IL-7,IL15等のサイトカインのみならず、常在細菌叢が大きく関与しているものと考え、メモリーT細胞が認識する抗原エピトープと常在細菌由来抗原とのcross-reactivityがメモリーT細胞の維持に重要であると考えた(J.Immunol.印刷中)。 3.養子免疫療法に必要な移入細胞数の決定:我々はMCMV感染細胞上に発現しているMCMV特異的タンパクm157を認識するキメラCD8細胞株を作成した。これを用いた予備実験の結果、養子免疫療法に必要な移入細胞数は1x10^6/headとした。 4.免疫療法に十分な量のメモリーT細胞を得る方法の確立:マウス脾臓よりanti-CD11c-magnetic beadsによりCD11c陽性樹状細胞を得ることが出来た。MCMV感染6ヶ月目の肺よりmultimer陽性メモリーT細胞をsortingにより採取し、抗原ペプチドをパルスしたCD11c陽性樹状細胞とIL-2、IL-15存在下で共培養を現在行ったが養子免疫療法に必要な量(1x10^6/head)まで細胞を増殖させることは出来なかった。 5.ヒトリンパ球を用いた実験:20人のボランティアよりヒト末梢血中のCMV特異的メモリーT細胞を採取し、CMV抗原パルス樹状細胞、IL-2存在下で培養した。その結果、末梢血中のCMV特異的T細胞の割合が多い(末梢CD8陽性細胞の割合が0.2%以上)ボランティアから得られたCMV特異的メモリーT細胞は10^5個→10^7個と十分な増殖が認められ、CMVに対する養子免疫療法を行うのに十分な活性型メモリーT細胞が得られた。しかし、末梢血中のCMV特異的T細胞の割合が少ないボランティアから得られたCMV特異的メモリーT細胞はin vitroでの十分な増殖は認められず、今後の課題となった。
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