研究概要 |
胃癌細胞株におけるin vivoでのgefitinib感受性(IC_<50>)は通常>10μMであったが、HER2高発現のGLM-1,GLM-2,GLM-4,NIC-N87では0.028,0.32,0.078,0.091μMであった。In vivoでもGLM-1に対する顕著な抗腫瘍効果を示した。HER2高発現細胞では1μMのgefitinibで有意にapoptosisが誘導された。LY294002でもapoptosisは誘導されたが、UO126では顕著な誘導はなく、HER2高発現細胞株の細胞増殖は主にPI3K経路を介していることが示唆された。リガンド刺激により、GLM-1ではErk1/2のリン酸化が促進されたが、これはgefitinibにより抑制された。すべての細胞株において、Aktの自動リン酸化が認められたが、これはHER2高発現細胞株でのみgefitinibにより抑制された。 IC_<50>が1.82μMと親株の65倍となる耐性株GLM-1Rを得た。リガンド刺激がない状態ではAktのリン酸化の度合いは親株と同等であったが、ShcとErk1/2のリン酸化が促進されていたことより、耐性株でのシグナル伝達はPI3K経路を阻害されてもMAPK経路で代償されている可能性が示唆された。 30例の外科切除標本から新鮮胃癌組織を採取し、collagen gel droplet drug sensitivity testを施行、gefitinibの感受性を測定した。感受性が認められた3例は免疫染色でEGFR陰性、うち2例はHER2強陽性であった。また、肝転移をきたした4例中2例がgefitinib高感受性かつHER2強陽性であった。以上より、今回の焦点となったHER2高発現でgefitinib感受性を有し肝転移をきたす亜型は一定頻度で存在することがわかった。
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