研究課題
基盤研究(C)
研究の目的:以前の研究において、胃癌の手術時にはたとえ早期胃癌であっても、約50%の症例において、主癌巣から癌細胞が末梢血液中に放出されることを確認した。手術時に主癌巣から血液中に放出された癌細胞は、速やかに血液中の白血球やマクロファージにより貪食され、血液中から排除されるが、この時に癌細胞の情報が免疫担当細胞へ伝達される可能性がある。一方、胃癌の再発は、手術時に残存している微量な癌細胞が年余を経て増大してくる結果で、臨床データから手術直後に末梢血中に癌細胞を認めた症例の予後が良好であったことから、手術時に遺残した微量癌組織は、感作された免疫担当細胞により排除されるのではないかと推察した。よって、以下の実験を行い、血中に存在する癌細胞と担癌生体の免疫応答を研究した。マウスを用いた実験:動物実験施設において,マウス(C57BL/6)の皮下に腫瘍細胞(B16OVA:メラノーマ)を接種し、3日後にマウス尾静脈へ微量な腫瘍細胞を注入する実験を行った。3群(1.B16OVA 2x105皮下接種群、2.B16OVA 2x105皮下接種群+3日後生食0.1ml静注群、3.B16OVA 2x105皮下接種群+3日後B16OVA 1x103静注群)を設定し、各群5匹で検討した。皮下腫瘍の増大速度は2群が最も速やかで、以下1群、3群の順であった。生存曲線も2群が最も不良であり、以下1群、3群の順であった。しかし、3群とも腫瘍の皮下接種後45日で全てのマウスは死亡し、有意の差は得られなかった。腫瘍の皮下接種後30日に脾臓を摘出し、脾臓内のCD8+T cellの密度をフローサイトメトリーにて確認したが、3群間に有意の差を認めなかった。
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