研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、心臓血管外科領域で重要な課題となっている体外循環(CPB)(特に脳分離循環)後脳障害に対する集中治療室(ICU)での軽度脳低体温療法の有用性を近赤外線分光法(NIRS)による脳内ミトコンドリア還元状態、脳障害指標であるS-100β蛋白の面から検討することである。<方法>インフォームドコンセントの得られた胸部大動脈置換術症例において、ICUでの体温管理法に従い、術後37.5℃群まで加温する群(加温群)と35〜36℃で維持する群(軽度脳低体温療法群)に分けた。すべての症例は、術中、術後の脳内酸素化状態をNIRSと、内頚静脈酸素飽和度(SjvO2)を用いて連続的に測定するとともに、S-100β蛋白を、(1)CPB開始前、(2)終了直後、(3)5時間後、(4)24時間後、(5)48時間後に測定した。<結果・考察>CPB中のNIRSによるチトクロムオキシダーゼ変化と術後脳障害の間には有意な相関が認められたが、測定部位(前額部)から離れた局所的な脳障害(後頭葉や側頭葉、大脳基底核周辺の脳梗塞)に関してはNIRSでは検出できなかった。ICUでのNIRSの変化やSjvO2値と術後脳障害との間に有意な相関は認められなかった。一方、S-100β蛋白は、ICUへ入室後の値(CPB終了5時間以降)と術後脳障害との間に有意な相関関係がみとめられた。ICUでの体温と覚醒時間を検討したところ、負の相関関係が得られ、体温が低いほど覚醒遅延を起こすことが示された。一方、ICUでの体温とS-100β蛋白との間の関係は正の相関が認められ、体温が低いほど脳障害の指標であるS-100β蛋白の値が低下していた。脳高次機能検査とICUでの体温の間に相関関係は認めなかった。今回の研究の結果では、ICUにおける軽度脳低体温療法は術後の早期覚醒に対しては不適であるが、CPB(特に脳分離循環)後脳障害に対しては障害の重篤化を防止あるいは軽減するための手段として有効な管理法である可能性が示唆された。
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