研究概要 |
1.ノックインマウス(KIMAP)とトランスジェニックマウス(TGMAP)前立腺癌の生物学的特徴を比較した. (1)KIMAP腫瘍は腫瘍構築の多様性と多病巣性を持ち,ヒト前立腺癌ときわめて類似した特徴を持つことが判明した. (2)cDNAマイクロアレイ解析において,KIMAP腫瘍では多数の免疫応答遺伝子の発現上昇がみられる一方,TGMAP腫瘍では神経内分泌分化に関連する遺伝子の高発現がみられた. (3).KIMAP腫瘍では,ヒト前立腺癌に特徴的な腫瘍マーカー遺伝子(hepsin,maspin,Nkx3.1,CD10およびPSP94)の発現が認められた. このようにKIMAP腫瘍はヒト前立腺癌との類似性が高いため,前立腺癌臨床試験においてこれまでのトランスジェニックマウスモデルよりも有用性が高いと考えられた. 2.マウス前立腺癌モデルにおいてバイオマーカーとしてのPSP94の有用性を検討するために,ELISA法を用いてマウスの血清PSP94濃度を測定した.野生型のマウスに比べ,血清PSP94値は腫瘍の悪性度が高いほど高く,腫瘍体積および月齢とも正の関連があった.去勢マウスにおける縦断的観察から,アンドロゲン除去に対する反応および再燃に血清PSP94値が関連して推移することが示唆された.以上より,マウスモデルにおける前立腺癌内分泌療法の血清マーカーとしてのPSP94の有用性が確かめられた. 3.マウズ前立腺癌の進展を観察するために,細径の超音波プローブを用いてマウスの経直腸的超音波断層法(TRUS)を行い,以下の知見を得た. (1)マウス前立腺癌のスクリーニングに用いるプローブの周波数は30メガヘルツが最適である. (2)直径1mm程度の腫瘍をTRUSで同定できる. (3)TRUSによりマウス前立腺癌の進展を縦断的に観察することが可能である.
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