研究概要 |
多施設共同研究における子宮頚癌発がんに関するコホート研究についての中間解析の結果を日本産科婦人科学会学術講演会のシンポジウムで発表した。その結果、子宮頚癌の前癌病変である子宮頸部異形成(CIN1/2)が高度異形成(CIN3)以上に進行するためにはまず、自然消退しないでCINが継続することと、その後にCIN3に進行する2段階があることが判明し、その過程では存続するためのリスク因子として、CINのグレードやハイリスクHPV感染、年齢、喫煙、性交パートナー数、結婚状況が関与した。また、進展リスクとしては、CIN2であること、ハイリスクHPV感染と、特定のHLA型が進行しにくいことが判明した。 これを踏まえて、子宮頚癌由来細胞株を用いて、その株に取り込まれているHPVのタイプを調べることと、株のHLAのタイプを調べた。子宮頚癌由来細胞株13種(TOM-2, TXC48. TXC154, TXC234, HOKUG, QG-U, SKG-I, HKMUS, HeLa S3, OMC-1, TCO-1, TC-YIK)を用いてPCR-RFLP法でHPVのタイピングを行い、同時にPCR-SSC,-SSCP法でHLA class Iのgenotypingを行った。その結果、7株でHPV16陽性、3株でHPV18陽性であり、1株では陰性だった。HLA class IはA locusではA*2402が半数を占め、*1101/02が3例だったが、regional controlの比を有意に逸脱するものは認められなかった。今回の7株でのHLA class Iのregional controlのカバー率はA,B locusで50%、C locusで66%だった。 以上より、CINから癌化する過程、さらに株化されてin vitroでの無限増殖系が確立されるまでにはHPVによる選択が不可欠であることが示唆され、その選択の過程でHLAのタイプによる宿主腫瘍の細胞性免疫発動の強弱が関与していることが推定された。この研究は株数を増やしてHLAのパネルを充実することが求められるが、子宮頚癌患者と健常コントロールのHLAの差違をHPV別に検討することで、子宮頚癌罹患に関する宿主要因が解明されることが期待されるものと考えられた。
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