研究概要 |
Heparanase(Hpa)は細胞表面、細胞外マトリックスにおいて重要な構造の一つであるHeparan sulfate proteoglycanの分解酵素である。担癌マウス、担癌患者の血中、尿中においては高いHpa活性がみとめられ、また細胞株においても転移能とHpa活性との相関が報告された。最近ヒトHpa遺伝子がクローニングされ、ヒト転移好発細胞株において高いHpa活性の発現およびHpaが血管新生促進増殖因子を刺激し、腫瘍血管の新生を促進していることが報告され、腫瘍細胞の転移・血管新生、さらに転移抑制療法との関連において注目されている。 まず、子宮体癌組織(類内膜型腺癌)52例を材料としRNAを抽出し、RT-PCR法によりHpaおよびb-actin mRNAを増幅し、FAS-II UV image analyzer, Quantity One Ver.3.0により定量化し、両者の比を臨床病理学的因子と比較検討した。20例中16例においてHpaの発現が検出された。臨床病理学的因子との比較では、1)臨床進行期IIIc期の全例でHpaの発現を認め、平均発現比0.616とIa, Ic期の平均発現比0.00, 0.115と有意差(p=0.0351, 0.0282)を認めた。2)リンパ節転移例においても平均発現比は0.696で、非転移例の0.282と有意差(p=0.0197)を認めた。3)組織分化度、筋層浸潤度、脈管侵襲、頚部浸潤、および腹腔内洗浄細胞診の各因子において有意差はないものの、予後不良群においていづれも平均発現比が高値を示した。 次いで、Hpa peptideを抗原として、ウサギに免疫し抗Hpaポリクローナル抗体を作成した。この抗体を用いて免疫染色を行い、子宮体癌組織におけるHpaの陽性率と局在を検討した。52例の子宮体癌症例のうち23例においてHpa陽性が免疫組織学的に確認できた。この染色結果と臨床病理学的因子を比較検討すると、手術進行期、組織分化度、筋層浸潤度、脈管侵襲の各因子において、有意に予後不良群でHpa染色陽性率が高率であった。リンパ節転移、頚部浸潤、洗浄細胞診、卵巣転移の各因子において有意差はないものの、予後不良群においてHpa染色陽性率が高率であった。 子宮体癌においてHpaの発現は、病巣進展の推定、リンパ節転移の推定さらには予後因子として有用な指標となりうると考えられる。
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