研究概要 |
研究実施計画に従い、同系マウス子宮内膜と新鮮血の腹腔内注入により高率に内膜症様病変を形成するモデルを作成し、これを用いて、血液の存在、血液凝固過程および卵巣ホルモンが子宮内膜症様初期病変形成に及ぼす影響について検討した。 1.卵巣摘出後(OVX)エストラジオール(E2)補充(2μg/日)を行ったC57BL/6雌マウス(7週齢)の片側子宮内膜を細切し、同系雌マウス(無処置)の腹腔内に子宮内膜を単独(内膜群)あるいは新鮮血全血(100μl)と混和(全血群)して注入した。5日目の病巣面積を比較したところ、全血群の内膜症様病巣(7.2+/-2.8mm^2,n=9)は、内膜群(1.1+/-1.6mm^2,n=6)に比し有意に大きかった(P<0.005)。2.血液凝固過程が病巣形成に及ぼす影響をみる目的で、新鮮血全血にヘパリン(1IU)あるいはEDTA(100μg)を添加した全血群の病巣面積を非添加の全血群と比較検討したところ、ヘパリン群(0.7+/-0.1mm^2,n=5)およびEDTA群(1.3+/-0.8mm^2,n=5)の病巣は有意に小さかった(P<0.01)。3.全血群の注入後1日目の病巣面積(2.3+/-1.8mm^2,n=6)は、3日目(5.8+/-3.5mm^2,n=6)および5日目(7.2+/-2.8mm^2,n=9)に比し有意に小さかった(P<0.05)。4.卵巣ホルモンの影響をみる目的で、レシピエントをOVX(2週間)群、OVX+E2補充群、雄群に分類して病巣面積を比較検討したところ、OVX群(5.2+/-2.9mm^2,n=11)、OVX+E2補充群(10.7+/-6.6mm^2,n=5)、雄群(5.6+/-1.9mm^2,n=7)においても病変を認めたが、全血群との間に有意差を認めなかった。また組織学的には全血群およびOVX+E2補充群において腺腔形成を認めたのに対し、OVX群および雄群では間質に多数の赤血球を認めた。 以上のことより、血液の凝固系が子宮内膜症の初期病変形成に関与しており、子宮内膜はレシピエントのホルモン状態に関係なく生着することを明らかにした。
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