研究概要 |
子宮癌検診の普及および治療法の確立により進行性子宮頸癌の頻度は減少し、粗死亡率はこの40年間で約1/3になった。また頻度もこの40年間でII期40%→15%,III期30%→9%,IV期12%→3%と減少し,早期癌症列が著明に増加している。しかし,依然として子宮頸癌は婦人科悪性腫瘍の中でも最も頻度が高い疾患である。子宮頸癌の病因としてHPV(human papilloma virus)の関与はすでに明らかとなっており,子宮頸癌の約90%にHPV感染が認められる。しかし,HPV感染者のほとんどが子宮頸癌を発生することはなく,またHPV16あるいはHPV16の転写産物であるE6/E7のトランスジェニックマウス(Tgマウス)においても子宮頸部病変は異形成にとどまり,浸潤癌は観察されない。そこで,HPV感染と同時に起こっているであろう発癌関連遺伝子の異常が近年重要と考えられている。また現在のところ子宮頸癌において有用な動吻モデルは存在せず,その開発力が望まれている。われわれは種々の発癌関連遺伝子(c-src, c-erbB2,IGF-1,E2F1)のTgマウスを作成し,これらのマウスにおいて皮膚癌、胆嚢癌、前立腺癌などが発生することを明らかにした。 本研究において平成17年度にはc-srcを過剰発現させたTgマウス(BK5.src^<wt>Tgマウス)における正確な子宮頸癌発生頻度を解析した。子宮頸部上皮肥厚を90%、子宮頚部上皮内腫瘍を30%のBK5.src^<wt>Tgマウスに観察可能であった。残念ながら,明らかな間質浸潤をもつ病変は認められなかった。平成18年度現在これら(DBK5.src^<wt>Tgマウスにおいて認められた子宮頸部上皮内腫瘍が発生するメカニズムを病理組織学的および分子病理学的手法を用いて解析中である。現在得られている有望なメカニズムとして,(1)c-src蛋白量の増加、(2)src kinase activityの増強、(3)MAP kinase activityは不変など,興味深いデータが得られている。
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