研究概要 |
【目的】羊胎仔実験モデルを用いて脳循環を変動させ、循環変動の脳組織への影響を検討した。 【方法】14頭の慢性実験モデルを用い(実験7,対象7),実験は4日間行い30分毎に90秒間の臍帯圧迫を1日7~11回繰り返した。胎仔脳組織はH&E及びSCR,GFAP,HLADRの免疫染色を行い、実験に関与しない神経病理医がBrain injury score (BIS) ; 0-normal, 1-minimal, 2-mild, 3-moderate to severeを用いて評価した。別に急性実験モデルを作成し、血圧変動を心拍数とSpO2とから推測する方法を検討した。この実験は鹿児島大学農学部家畜外科学およびウェスタンオンタリオ大学医学部産婦人科の実験室で行った。 【成績】90秒間の臍帯圧迫により胎仔の平均動脈血PO2(24.0±0.5 to 6.7±0.8mmHg),pH(7.36±0.01 to 7.31±0.01)と有意に低下したが次の臍帯圧迫までには回復し進行するacidosisは認めなかった。実験群において全ての胎仔がminimal injury(subcorticalのGFAP and/or HLADR染色の増強)もしくはmild injury(minimalに加えischemic neurons in frontal and/or parietal cortex)を呈した。対象群においては1頭がminimal injuryを示した。実験群のBISは1.6±0.20であり対象群の0.4±0.25に比べ高かった。(non-paired t-test, P<0.01) 【結論】90秒間、30分おきの間欠的臍帯圧迫によりアシドーシスを伴わない急性低酸素血症を作成した結果、間欠的臍帯圧迫はbrain damageをおこす可能性がある。これらの循環動態の変動を臨床的に観測することが重要である。
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